旧ソ連により、カザフスタンのセミパラチンスクSemipalatinsk(Semey )で核実験が行なわれました。中国では、ウィグル地区のロプノールLop Nurで核実験が行われました。そして、両方の核実験場の中間地点にあるカザフスタンのジャルケントZharkent やマカンチMakanchiで、住民の深刻な放射線被害が発生しています。ジャルケントは、セミパラチンスクから695キロ離れています。マカンチはセミパラミンスクから420キロ離れています。
ソ連のセミパラチンスクで被曝の影響を調査していた「ソ連保健省附属第4診療所」のスタッフは、1966年12月、中国とカザフスタンの国境沿いにあるマカンチから放射性物質を検出しました。第4診療所スタッフは、ロプノール核実験場から1000kmあまりも離れているジャルケントやマカンチの放射能を計測していきました。
おそらく、ジャルケントやマカンチでは、放射性物質が風に乗って運ばれたと考えられます。ジャルケントとマカンチが両方の実験場の中間地点にあったことは、そこの被害を大きくしたと考えられます。また、両方の場所が核実験場から何百キロも離れていることは、放射能の影響が非常に広範囲に及ぶことを示しています。
ジャルケントは、カザフスタン最大の都市アルマトイから北東へ約350キロにあるパンフィロフ地方の中心地です。人口は約四万五千人。付近の病院では、手足の奇形や、大きな腫瘍で盛り上がった背中を持つ子供たちが生まれています。ジャルケントの住民ジャンタグロバさんがため息をついて言います。「この町で生まれ育った私が異常と思うほど、ここ十数年でこんな赤ん坊が増えている」
住民たちは、旧ソ連のカザフスタンにあるセミパラチンスク核実験場に対して閉鎖を求める市民運動をしていました。しかし、彼女は天山山脈を越えた数百キロ東にあるロプノル核実験場へも疑いの目を向けました。
1990年代初頭に、カザフスタン厚生省が行ったジャルケント周辺の0~6歳の子どもの健康調査によると、ジャルケントの子どもたちの身長は他地域よりも8~12センチメートルも低く、また、75%の子どもたちが鉄分不足の貧血、発育不全、病弱体質などの何らかの疾患を持っており、さらに高レベルで癌が発生し、毎年70名余りが白血病になっています。
ジャルケントの病院医師は、四肢の先天的異常、てんかん、貧血、白血病など、十年ほど前から増加した疾患名を次々と挙げました。この病院で、一週間に60人ほど生まれる新生児の一割に異常があると言います。「旧ソ連時代は、治療と研究機関を厳密に分けていた。私たちに課せられたのは、病気を治すことだけ」と語りました。
ですから、この事実は、核実験や核兵器使用の影響が何百キロ離れた所、場合によっては千キロ以上離れた所であっても深刻な放射線障害を引き起こす可能性があることを示しているのではないでしょうか。
ですから、放射能は国家の壁を越えて非常に広範囲に有害な影響をもたらすことが分かります。ですから、核兵器の使用は、意図していなくても他国だけでなく自国の国民も同様に害します。
